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側弯症の進行を予測する。

御無沙汰しています。
今日は少し残念なニュースです。
以前にご紹介したScoliscoreというアメリカで承認されている特発性側弯症進行予測検査のことです。
このキットは患者の唾液サンプルを少量採取して、この遺伝子を検査することで、かなり高い確率で、側弯症が進行するかどうかを予測できるというものです。
側弯症の治療の課題は、本当に進むものだけを早期に発見して、まだ手術が困難にならないうちに手術を行うことができるようにすることですから、この検査には私自身もかなり注目しておりました。
しかし、先月コペンハーゲンで行われた学会に参加した折に、このキットの開発者(Dr. Ogilvie)に直接話を聞いたところ、東洋人は当てはまらないとのことでした。
理由は、このキットは開発するにあたって、たくさんの患者さんの遺伝子サンプルを集めたのですが、東洋人はあまり数が集まらなかったため、得られた結果は白人や黒人の遺伝子サンプルから導き出されたからというのが理由です。
これを聞い、私自身も本当に落胆しました。
私にはいつか、アジアの途上国で、放置さらたまま側弯症が進行してしまい、命を脅かされている子どもたちを助けたいという夢があり、このキットが低価格で使用できるようになれば、このような途上国でさえ、進行してしまい、命を失う前に、その子たちを見つけ出して、治療することができると思っていたからです。
しかし、このキットが使えないからといってわたしはあきらめません。
外科医として、困難な脊柱変形を治療できることと、進行する患者を早期に見つけ出して、難しくない手術ができるうちに治す。この両者が合わさってはじめて、多くの脊柱変形で苦しんでいる人々を救うことができると考えているからです。
ですから、私自身で、東洋人の特発性側弯症の進行のリスク因子の遺伝的解析を行うことにしました。
この研究はすでに国からの援助もいただいています。これから始める自分の研究が足がかりとなり、いつかscoliscoreのように、多くの患者さんを救える日が来るのを信じています。
それでは。

脊椎業界最近の大事件

御無沙汰してしまいました。先週はコペンハーゲンで学会発表があり、出張していました。雨も降っており、朝7時前からずっと学会場にこもりっきりで、話を聞いたり、ボスのBoachie先生といろいろ相談をしたり、ほかの海外の先生方といろいろ交流を深め、とても有意義に過ごすことができました。毎度のことですが、観光する時間は今回も全くありませんでした。
ところで、脊椎の業界では大きな事件が起こっています。
アメリカを中心として、術後の骨癒合を促進する魔法の薬として、現在ではアメリカでは全症例のおおよそ40%くらいに使われていた。薬があるのです。
開発メーカー(脊椎業界最王手)が中心となって行われた研究でも安全性が高く、骨癒合をかなり促進するとして、私自身もアメリカ人と比べて骨の弱い日本人には大きな利益があると考え、早く使えるようにならないかと、認可されるのを心待ちにしていた薬です。
最近どうも合併症が多いようだということで、アメリカのFDA(アメリカ食品医薬品局)が、再度、メーカーとは別に検査を行ったところ、神経痛や痛みが多く起こるだけでなく、死に至るような合併症や男性型不妊(射精障害)あるいは大量に用いると、がんになる可能性があるらしいとのことがわかりました。これらはどれ一つとっても、メーカーが中心となった研究では報告されてないとのことで、アメリカ上院議会でも取り上げられているようです。
このような流れでは、日本で使えるようになることもないでしょうし、私としては1日千秋のおもいで待っていたので、大変ショックです。しかしこれもやもえません。
魔法の薬ではなかったようですね。
以下サイトのアドレスです。
英語ですので、少し難しいかもしれません。

http://www.yourlawyer.com/topics/overview/Medtronic_Infuse_Bone_Graft

側弯症が進みました。

側弯症が進みました。
といわれるととてもショックですよね。
特に頑張ってコルセットなどをしていればなおさらです。
では、いったい何を持って側弯症が進行したというのでしょう?
みなさんご存知のように、側弯症はカーブのなかで上下の端を脊椎のなす角(Cobb角)(コブ角)
を計りますよね。この角度は、やはり人間が測りますから、誤差が生じるのです。
では、いったいどのくらいの誤差が生じるのかを調べた研究があります。
何十人かの側弯症のレントゲンを複数人の医師で、それぞれ複数回計測した時に、同じレントゲンに対して、同じ医師が測定ごとにだいたいどのくらいの違いがあるかの平均を調べたものです。
結果としては平均3度前後です。ですから、3度前後は誤差の可能性があるという風に考えるのが一般的です。
現在最も信頼されているのは6カ月以上の経過の中で5度以上の違いがあった場合を進行しているとすることが最も多いようです。
もっとも最近は、コンピュータ上で計測することが多くなり、誤差も減りました。最近ではコンピューターで自動的に測定する試みも行われており、より誤差が小さくなると考えられており、みなさんが誤差で、側弯症が進んだとお悩みになることが減っていくと思います。
余談ですが、コブ角を考案したコブ先生が、私がアメリカで勤務していた時の病院のボスであるBoachie先生の前の前の責任者だったんですよね。かれはこのコブ角が世界的な常識となる前に若くして、病でこの世を去りました。まさかここまで、自分の考案した角度の測り方が有名になるとは想像していなかったでしょうね。

plaraのアドレスから先日メイルでご相談いただいた方へ

plaraのアドレスから先日メイルでご相談いただいた方へ
VATER associationのお子さんの件で、メイルで御相談いただいた方。
何度か返信をいろいろなアドレスから行いましたが、返信できません
お手数ですが、ほかのアドレスか、返信できるアドレスから再度メイルいただけますか?

側弯症の進行度

今日は特発性側弯症の進行度に関して

側弯症にはみなさんご存知の通りたくさんのタイプがあります。先天性、特発性、麻痺性などなど。
その中で最も頻度が高いものが健康な学童期のお子さんに発生する特発性側弯症です。
これは明らかな原因がなく脊椎が成長に伴って曲がってきてしますというものでしたよね。
もしお子さんやご本人が特発性側弯症と診断されたとしても、これは単一の個性を持っているわけではないのです。
たくさん進むかた、急に進む方、カーブが1つの方2つの方3つの方、上の方にできる方真ん中にできる方、下にできる方。
同じ特発性側弯症といっても、その個性は実に様々です。
ですから、あるかたは何も治療も必要ないですし、あるかたはコルセットをしていてもなおかつ手術が必要になります。
ですから、外来で待っていたり、あるいは同じ側弯症の方と話し合うと、ある方は装具で進行が止まり、ある方は手術をし、ある方は何もせずとも大丈夫だったといういろいろな話を耳にすると思います。
この違いが、側弯症の個性の違いなのです。
みなさんのお子さんにはそれぞれ長所や短所があると思います。これは御家族の教育や生まれ持った素因(遺伝子)によるものであり、他の方とは比べられないのと同じで、お子さんの側弯症もお子さんの個性の一部なのです。ですから、当然、同じ疾患でも他の子どもとは違い単純に比較はできないのです。
もしお子さんが装具をしても手術になってしまったとしても、それは病気の個性が原因である場合がほとんどでしょう。ですから、どうぞ、御自身を責めることのないようにお願いしたいと思います。
このような個性がどこから来ていてどのように治療していけばよいのか。それを明らかにするのが私たちの責務だと思っています。
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側弯症のお悩み

このブログを立ち上げてから約半年がたちました。当初よりアップする頻度が減っていることを大変反省しています。このブログをはじめてよかったなと思うこともこの6カ月でたくさんありました。
なかでも、多くの患者さんやそのご家族ららご質問、励ましのメイル(本来は私が皆さんを励まさねばならないのですが)をたくさんいただくことができました。
側弯症は専門性の高い病気ですから、それなりの施設でないと正しく判断できない場合がありますし、医者を目の前にすると聞きたいことも聞けない場合も多いようです。たいていの医師は質問すればちゃんと答えてくれるはずなのですが、なかにはそうでない場合もあるのでしょう。
そんな方のご質問に答えることができて、本当によかったなと思っています。
この間数えましたら、ざっと100通のメイルやコメントをいただいているようです。
もちろん、すべての質問の正確に答えているとは思いませんし、間違いもあるでしょう。判断材料が十分でない場合もあります。
いつかこの活動が側弯症の遠隔医療のきっかけになり、普段は近くでレントゲンだけとってもらい、画像と実際の背中の写真をんラインで見せてもら行って、いよいよ手術が必要そうになったら来院してもらうということで、地方や医療過疎のところにお住まいの方や、普段は忙しくて、大きな病院には通院できない方の力になる日がくればと思っています。

側弯症の原因

今日は側弯症の原因となる遺伝子の話。
これまで、特発性側弯症に関しては、その遺伝子の調査は世界中で行われていて、しかしまだはっきりと何もわかっていないのが現状です。側弯症に伴って、その結果として針原料の変わる遺伝子は複数わかっていますが、それは結果であって、原因ではなさそうです。つまりニワトリと卵の話なら、ニワトリであって卵ではないと。
先日ありがたいことに国から私の側弯症の遺伝子研究に対して研究費をいただけることんになりました。このような国の状態に、私の研究に対して研究費をいただけることは大変ありがたいことなので、一円も無駄にしてはいけないと思い、いろいろな方法を考えています。現在予定していますのは、特発性側弯症の中には家族内で発生する、明らかな遺伝傾向を示す方がおり、これらの方の遺伝子と、ご家族の中で側弯症を発症していない方との比較で、病気の遺伝子が染色体上のどこにあるのか、またどの遺伝子なのかを調べるという計画です。何千万円という予算ではないので、なにもかもできるわけではありませんが、この調査を継続して行っていくことで患者さんの家族の数が増えれば、5年後10年後には良い結果が出るのではないかと期待しています。まだ少し研究費が足りないので、いろいろな民間の助成金に応募して、研究費の獲得を目指します。もちろん遺伝子検索といっても、すべての情報は個人が特定できないように暗号化してしまうので、だれの創弯症がどういう遺伝子が原因だというようなことがわかるわけではありません。僕自身も、どの方の遺伝子を解析しているかはわからないように暗号化してしまうので。
結果が出れば、すぐにみなさんに報告します。
遺伝子が特定できれば、その遺伝子の異常の程度などで、側弯症の進行がある程度予測できるようになり、本当に必要な方だけを、重症になる前に発見し、手術し、不必要な手術を減らすことができれば最高だと思っています。
世の中にはいろいろな研究があります。基礎研究、臨床研究。
それぞれに大変重要なことです。医学に限らず、科学的な基礎研究が今日の日本の科学技術を支えているわけですから、非常に重要です。。最近は風潮として、研究をしているというとなにか少しうがった目でとらえられることもあるようです。私個人にとっての研究とは、その結果によって社会に、患者さんに貢献することですから、これからも手術や外来の合間を縫って研究を継続して行っていきたいと思います。
側弯症の疫学を知り、歴史を知り、現在における最善の治療を知り、それを行い、未来に向けた問題点を考え、解決する様に努める。それが側弯症外科医に与えられた役割だと思っています。

医療 ボーダレスワールド

今日は側弯とはあまり関係ない話。
多くの業界ではすでに世界との垣根はとても小さなものとなりつつあり、国内だけにとどまって仕事を成功させ続けられる環境ではなくなってきていますよね。
世界中の人と競争し、生き残れるように努力することは大変なことだと思いますし、結果として、不必要な部分のコストカットなどにより、悲しい結果に終わる場合もあります。
しかしこのような結果となることは、ボ-ダレスワールドであるということに原因があるわけではなく、企業風土に原因があるわけです。ですから淘汰されていくのは仕方のないことかもしれませんね。こうして生き残った企業からはすばらしいサービスや製品が作り出され、そのシオンを受けるのはわれわれ世界中の人々ということになるはずです。医療業界をみてみるとどうでしょう?
医学部を卒業して医師免許を取得するというかなり高い参入障壁がありますし、国内では保護されていますよね。言葉の壁もあり実質的に外国人医師はほとんどいませんし。ですが、法律上は彼らも日本国の医師免許を取得すれば参入できるようになっています。しかし、その国々で異なる医師免許を取りなおすのは誰にとっても非常に高く感じる参入障壁です。ここはいっそ、多少の風土病などに対する必要知識の差はあれど、世界共通の試験にしてしまえばいいのではないかとい思っています。理由は、いまはヨーロッパもアメリカも、距離的に遠いですが、いつかたった2,3時間でかの地に移動することができる時代が来るでしょう。
東京から大阪に行くくらいの感じです。そうなればもっと多くの人が、世界の各地に行き、また日本に入ってくることになるでしょう。これからも我が国の人口の推移をみますと、移民を受け入れることは既定路線のように感じます。そうなってきますと、今以上に世界共通言語である英語が話せることが日本人にも、いまにもましても必要なスキルになってきます。自分のアイデンティティーをしっかり持つことは大事ですが、世界の一員として、いやでも世界地図の中の一部となるときがすぐそこまで来ていると思います。そんなとき、世界のどこでも通用し、また医療を行えるライセンスを持っていることはやはり、重要なことなのでしょう。そのためにどうすればよいのか、いろいろと考えてしまいます。
。 数時間で諸国を移動できれば、患者さんは腕のいい医者の所におのずと世界どこへでも行きますし、医者も必要があればそこへ行ってい治療する。そんなことができるようになる未来が来る日を望んでいます。

日米医師育成制度の違い(4)

数年前にある世界的にとても有名な日本人の神経科学の権威の方と話した時、彼は日本の医学部を卒業してからアメリカにわたり、そこで教授になったのですが、
アメリカの医師育成制度は最高だ。私はあなたの1万倍の知識があると、とても挑戦的に言われたことがあります。
当時私は自分なりに毎日一生けん命勉強していましたし、少しは知識があるつもりでしたから、とても腹が立ったことがあります。
その時には私はアメリカに行く前でしたから、日本人の医師も負けてはいないという思いが強くあったのですが、実際にNew Yorkで世界最高と評価されている病院で働いてみると、その違いには驚きました。日本人は能力では負けていないと思います。とても努力されている方も大勢知っています。しかし制度では、アメリカの勝ちだと思います。メジャーリーグでは最高に能力の高い人が世界中から集まり、しのぎを削っています。
多くの国内で最も優秀といわれている日本人医師たちがメジャーリーグに行って、つらさや挫折、くやしさを味わい、祖国の医療をよりよくするために危機感を持って働かなければなりません。

日米医師育成制度の違い(3)

私個人の感想としてはアメリカの制度が好きですが、日本では医師の偏在が問題になっています。医局制度が機能していたときにはだれも行きたくないと思うようなところでも、ある意味強制的に出向させることで、その地域の医療を支えていたのですが、それが崩壊すると、地域間で医師の偏在が起こるといわれ、実際にそうなっています。
このことから、これまでの制度に戻すべきだという意見と、推し進めるべきだという意見があります。この判断は非常に難しいと思いますが、今はおそらく大きな変化のさなかにあるのではないかと思っています。完全な競争原理が度入されれば、医師が偏在するには限度がありますし、おのずとよい病院は定員がいっぱいとなり、そうでない病院にも人がいきわたると思います。また人が行きたがらない病院は主体的に魅力ある組織になるべく組織として努力もするでしょう。
それが私が感じることです。
そのうえで教育者を目指したい人は大学に勤務すればよいと思いますし、そうでない人は自分の能力を磨いて、良い病院に採用されるように努力すればよいのではないかと思います。これはほかの業界ではとても一般的なことだと思います。ただ、アメリカのよう、あるいは他の業種のよう、にその競争に勝ったからといって給料が高くなったりするわけではないので、ただつらいだけになってしまう可能性もあるわけです。に似ごとにも成功したらそれに対する報いというものがないと、システムとしては成立しづらいですよね。
難しいところです。

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