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骨密度は脊柱変形の手術成績に影響を与えるのか?

本日はお子さんの側弯症ではなく、成人の側弯症の中でも65歳以上の年齢で手術を行った場合の成績と合併症に関してです。2006年にSpineという雑誌に掲載された論文を御紹介します。
Instrumentation-related complications of multilevel fusions for adult spinal deformity patients over age 65: surgical considerations and treatment options in patients with poor bone quality.
DeWald CJ, Stanley T.
Spine (Phila Pa 1976). 2006 Sep 1;31(19 Suppl):S144-51.
Dewaldさんは脊椎のとても有名なテキストをたくさん書かれている大御所の先生です。
その先生のグループが行った65歳以上の患者さんで、脊柱の変形のために5つ以上脊椎を固定して、5年以上経過した38人の患者さんの結果をまとめた論文です。
気になるのはやはり合併症ですが、
固定したインプラントに起因すると思われる早期の合併症として、
脊椎固定部位の上での圧迫骨折や、固定した部位の椎弓根といわれるスクリューを打ち込むところの骨折が約13%見られたということです。
また、2年以上経過しての合併症として
隣接する部分の椎間板の変性、偽関節、脊椎固定部位の上での圧迫骨折、固定した部位の上部での後弯変形などが全体の26%に見られたということです。
これらの合併症が起こるリスク因子として、骨質が悪いことを挙げています。また、骨質が悪い患者さんのこのような合併症を減らすのにはインプラントだけでは限界があるだろうと結論付けています。
一方で我々も骨質が手術の成績に影響を与えるかを解析して報告しています。
Characterization of osteopenia/osteoporosisin adult scoliosis: does bone density affect surgical outcome?
Yagi M, King AB, Boachie-Adjei O.
Spine (Phila Pa 1976). 2011 Sep 15;36(20):1652-7.
私たちは成人の特発性側弯症の方の骨密度が一般の方より低いのかどうか、また骨密度が手術成績に影響を与えるのかどうか調べました。200人近い患者さんの中に骨粗鬆症の患者さんの割合は健康な同世代の方の中にいる骨粗鬆症の方の割合と同じで、成人側弯症の手術成績では骨密度と手術成績に因果関係は見られませんでした。
では、両者の結論の違いの原因はいったいなんでしょう?
1.対象患者さん
2.固定範囲
私たちの場合には骨密度の低い方は、固定範囲を長くとって、一つの脊椎にかかる負担を減らすようにしていました。そのことが偽関節やインプラントが抜けてしまうことがすくなかった原因だと思います。それから、Dewaldさんの患者さんたちよりやや平均年齢が若く50歳くらいだったことも大きく影響していると主ます。50代の方はやはり60代の方より健康ですから、このことも、隣接する部分の骨折の有無に影響していると思います。
隣接する椎間の後弯変形というのは現在大きな問題として取り上げられていて、私の専門分野でもあり、脊椎の横から見たときの骨の並びと密接な関連があることは知られていますが、この話はオタクすぎるので、割愛します。
いづれにしても、高齢で骨密度が低ければ、インプラントに起因する合併症は多く、これを減らすためには、それなりの工夫が必要だということになります。脊椎の並びの最適化、固定範囲の検討、骨の補強など。そして、これまでのところこれを完全に克服する方法はまだ見つかっていないということです。
図1.png
図2.png
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