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側弯症学会@イスタンブール

イスタンブールに学会発表のために行ってきました。全部で6つ自分の発表があったのですが、全部ポスター発表というものでしたので、今回は気楽なのと、次回は講演になるようにしなくてはならないという、残念な気持ちと半々でした。今回も、普段は顔を合わせることができない、アメリカやヨーロッパの友人たちや、ボス、また新たな方々との出会いがあり、これらの先生方との共同研究などの話も盛り上がりました。こういった発表や共同研究などの有形のことだけでなく、同じ側弯症という業界の多くの先生方と話ができ、お互い顔がわかるようになるのは大切なことだなと、学会のたびに毎度思います。なかでも今回は、世代の近い新たな仲間ができたのが大変うれしかったです。この業界の私の知り合いはどちらかというと、大御所と呼ばれる人たちが中心でしたので(もちろんそれも大事ですが)、今回は同世代のこれから側弯症業界を担っていく人たちと出会えたのがよかったです。国が違い、人種が違っても皆に多様な悩みを抱えながら、笑顔で過ごしていることは、自分自身の大変な励みになりました。これからも出会いを大切にして、この世界で頑張っていこうと気持ちを新たにしました。良い旅(出張)でした。
写真は新たな仲間のSeanとMikeと。
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ウサインボルトの側弯

土曜日のNHKのミラクルボディという番組をみた方は感想は如何でしてたか?取材の申し込みがあった時にはまさか、ウサインボルトが側弯とは思わず、取材協力の時に画像をみて大変驚きました。彼が側弯にも関わらず本人の類稀な才能と努力、周囲のサポートで、圧倒的な世界記録を樹立したことはまさにミラクルですね。同時に、側弯で、苦しんでいる多くの方の励ましになったのではないかと思います。本当は放送前に側弯で苦しんでいる多くの方に沢山宣伝をしたかったのですが、放送前でしたので、控えました。見逃した方には再放送などがあると良いですね。ボルト選手は手術してはいないのですが、アメリカでは、女子プロゴルフ世界ランキング2位のステイシールイス選手は数年前に側弯症で当時の私のボスのところで、手術を受けています。ですから手術してい人も、していない人も世界最高水準でスポーツが出来ているということです。しかし、病気に程度やタイプに個人差があり、皆同じことができるというわけではないですね。適切な病院で、適切な医師に適切なタイミングで適切な治療を受けることがとても大切ですね。ボルト選手にはぜひ世界中の側弯症の患者さんのためにも金メダル!そしてもう一度世界記録を樹立してほしいですね。

NHKで7月に面白い番組の放送があります。

NHKでオリンピックに出場する選手の脅威の肉体に迫った番組
ミラクルボディ
というシリーズを7月から放送します。
第1回は7月14日 (土)19時30分から
陸上100,200mの世界記録保持者ウサイン・ボルト選手を取り上げ、
その肉体の秘密に迫っています。
実は私も医療関連のアドバイス、制作に協力いたしました。
とても面白い番組で、側弯症の皆さんにもひょっとしたら
励ましになるかもしれません。
ぜひご覧になってください。
下記がホームページです。

http://www.nhk.or.jp/special/miraclebody/

側弯症情報サイトのご紹介

本日は2010年に私の作ったサイトのご紹介です。
たくさんの方からご質問で
”側弯症っていったい何ですか?”
”病気について詳しく教えてください”
というメイルをよくいただきます。
確かに日本語の側弯症の情報はあまりなく、
外来当日には上がってしまったり、動転してしまったり、担当の先生とお話しができないということはよくあることですよね。そこで、みなさんからよくいただくこのようなご質問に含まれている項目をなるべく含んで2010年に側弯症のサイトを作りました。
アドレスは
https://sites.google.com/site/gawawanzhengtotatakaou/
です。
まだまだ完成とは言えない内容ですが、ときどき書き足しています。
みなさんのご参考になれば。

先天性側弯症の手術に関して。


こんにちは今回はわりと皆さんからのお問い合わせの多い先天性側弯症や幼児期特発性側弯症の手術に関してです。
先日お伝えしたgrowing rodやコルセットなどいろいろな方法がありますが、思春期特発性側弯症と違って手術のタイミングや方法など未確定な部分が多いのが事実です。今回ご紹介する論文は2003年にドイツで最も権威のある側弯症の治療医であるDr. HarmsとDr.Rufが書いたものです。
1歳から5歳というとても小さな年齢で先天性側弯症を矯正固定したらどうなるかという報告です。

Posterior hemivertebra resection with transpedicular instrumentation: early correction in children aged 1 to 6 years.
Ruf M, Harms J.
Spine (Phila Pa 1976). 2003

対象は28人の先天性側弯症のかたで、平均年齢3才4カ月ということです。平均追跡期間は術後3.5年でした。患者さんは全員、半椎という脊椎の形成不全という種類の先天異常があり、これを摘出し、後方からスクリューで固定する手術を行っています。
結果は良好で、心配された神経を守る脊柱管という脊椎の中での脊髄の通り道の成熟も充分行われ、矯正位もよく保持されていました。脊椎の可動域も良好でした。
彼らの主張はカーブが小さく、やわらかく、それを代償するためのカーブが小さく、固定範囲が少なくで済むうちに固定を行えば、その後も良好な生活が送れるというものでした。
おそらく大切な部分は、カーブを先天性の問題がある部分で完全にまっすぐに治すことだと思います。
それによって固定範囲を極めて小さくして、なおかつ固定していない部分にカーブができるのを防ぐということだろうと思います。
先天性側弯のなかで1つか2つの半椎だけが問題で、この摘出で完全にカーブを矯正できるのであれば、これは良い先選択肢かもしれませんね。
それでは。

新しい側弯症の手術方法

今日は新しい側弯症の手術方法のご紹介です。
これは世界で最も権威あるLancetという医学雑誌に掲載されたばかりの論文で発表された術式で、これまでの手術のマイナス点を改善する可能性がある方法として注目されています。
タイトルは
Magnetically controlled growing rods for severe spinal curvature in young children: a prospective case series.
著者は
Cheung KM, Cheung JP, Samartzis D, Mak KC, Wong YW, Cheung WY, Akbarnia BA, Luk KD.
です。
これまで小さなお子さんに側弯症の手術をする際、側弯の進行を止めるために背骨の固定が多くの場合必要でした。
この結果、側弯症の進行は抑えられたのですが、身長が伸びなくなってしまうので、整容上の問題だけでなく、肺の成長を著しく抑え込んでしまうため呼吸器機能の問題がありました。
そこで、今日ご紹介したの論文の著者の一人で私の恩人のひとりでもあるDr.Akbarniaは10年くらい前から、背中にインプラントを入れて、6カ月に1度小さな手術をしてレンチでインプラントを延長することで背骨の伸びと側弯のコントロールを両方安定させようという手術を行ってきました。
この手術はgrowing rodと呼ばれる術式で、私のサイトやブログでもご紹介した画期的な方法でしたが、合併症が多いことと、6カ月待っている間に骨が癒合してしまい、思ったほど背骨が伸びなかったり、側弯がコントロールできないのが悩みでした。
そこで今回かれらが行ったのは、インプラントの手術をした後に、6カ月に1度延長するのではなく、磁力を用いて体の外から磁石で毎日インプラントの中にあるねじのような部分を伸ばすことで、毎日自然に背骨を伸ばし、側弯もコントロールするというものです。
今回の論文では2年間2人の患者の経過を見て、成績はとてもよかったというもので、もちろんまだまだ検証しなければならないことはありますが、良い方法として大変期待されます。
Akbarnia先生は寝ても覚めても小さな子どもの側弯を治すにはどうすればよいのかを考えているようでした。
見習わねばと思います。いつか彼のように手術がうまいことや、正しい治療、診断をすることだけでなく、その分野の多くの患者さんや医師を助けることができるようになりたいと思います。
日本のモノづくりの精神は我々医師にもあると信じたいです。
ですが、日本の医療制度も、人々の考え方もこのような革新的なことにもう少し寛大になる必要があるでしょう。


アフリカ行きのメンバーに選ばれました。

2009年から毎年続けているガーナでの医療活動ですが、今年も4月末に行くことになりました。
医療活動の目的なアフリカ中から集まる重症の側弯症や結核などによる脊椎の変形によって命の危機にさらされている子どもたちを助けることです。
世界中から多くのとても優れた脊椎外科医たちが応募するので、今年はもう選ばれないのではないかと、諦めかけていたのですが、Dr. Baochieからの公式な招聘状が昨日深夜に届きました。
うれしくって目がさえて朝まで眠れませんでした。今日は手術がなくてホッとしました。
アフリカではいまだに多くの子どもたちは飢えと貧困に苦しみ、恵まれた日本とは違い、子どもたちは手術の費用を払えるような子どもはほとんどいません。
多くはそのまま命を落としていくことになります。
もちろん一生のうちに自分だけで助けられる命の数はほんのわずかなものですが、私の所属している財団では、毎年100件以上このようなほうっておくと命の助からない子供たちを手術していますから、この活動が20年30年と続けば、2000人、3000人やがては1万人の子どもの命を助けられることになります。
また、財団では同時にアフリカの医師たちへ最先端の手術手技や診察方法などの教育にも力を入れています。やはり、最終的には私のようなよそ者が手術に行くより、現地で優秀な医師を育てて、彼らが通年で手術を行っていけば、より多くの命が助けれれろと思います。その時には私はもうアフリカへ行かなくてもよくなります。少しさみしくなりますがそうなれば最高だなと思っています。
そのための大きな大きな一歩が今春ついに踏み出されました。
財団の専門の病院がガーナの首都アクラに建設され、4月末にオープニングセレモニーを行います。
これは財団の創始者であり、私の恩師であるDr. Boachieの人並み外れた努力と献身によって成し遂げられたことです。
病院のレベルはアフリカと聞いて皆さんがご想像されるものよりはるかに近代的です。最先端の手術機器、ICU,診断器械など、日本の総合病院に起きていないレベルの機器も完備されています。
これまではガーナの最大の総合病院の手術室を貸し切って手術を行っていましたが、費用も莫大で、なかなか寄付等では賄いきれない金額でした。また、病院への移動や、手術のスケジュールの調整などが非常に困難で、これらのことがなくなり、患者もより安全性の高い病院で治療を受けられる良いことづくめの第一歩です。やがては、ここがアフリカ最高の整形外科の病院になり、世界最高の病院にするのがDr. Boachieの目標です。いまDr. Boachieが脊椎側弯症の責任者をしているNewYorkのHospital for Special Surgery(私も以前一緒に勤務していました)は現在全米1位にランクされている病院で、それと同じレベルの医療を提供する、しかも安く!というのが目標です。
最高水準の機器を完備する理由は、なんとなく、”アフリカで医療を”というと野戦病院で緊急手術をするというイメージですが、実際にわれわれが行っているのは、世界最高難度の脊柱変形の手術です。普段自分の病院で行っている手術よりもずっと難しいものが主ですから、私自身もまだひとりですべて安全に遂行できるわけではないのが現状です。しかし継続して活動に従事することでいまでは、自分自身の技術も向上してきたように感じます。
やがては、アジア諸国で、同じように脊柱変形のために苦しんでいる子どもたちを助けることができればと考えています。
ですから、いまはDr.Boachieの夢に相乗りさせてもらいながら、残団の運営から、手術手技の向上、資金の調達方法などすべてを教わっている段階です。
いわゆる師匠と弟子の関係にあたると思います。
このように私に目をかけてくれる最高の恩師に巡り合えたことに感謝しつつ、自分にできるあらゆることをして、その恩に報いようと思います。
それでは。
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側弯症の再手術は安全か?

3月になりました。まだまだ寒い日が続きます。春はいつやってくるのでしょうか?さて、春休みの季節になり、当院でも特発性側弯症の手術が多くなってきました。多くの方が休みを利用して手術をお受けになります。ただ、最近では入院期間は2週間程度で、そのあと復学できますから、かならずしも休みを利用しなくてもよくなってきています。
ところで、本日は子どものころに側弯症の矯正固定術を行って、時間が経過して、中年、中高年になり、隣接する脊椎の問題で手術の固定範囲を延長しなければならない場合に関して、その安全性と成績に関しての論文を紹介します。

Comparative Analysis of Clinical Outcome and Complications in Primary Versus Revision Adult Scoliosis Surgery
Cho, Samuel K. MD*; Bridwell, Keith H. MD†; Lenke, Lawrence G. MD†; Cho, Woojin MD, PhD‡; Zebala, Lukas P. MD†; Pahys, Joshua M. MD†; Kang, Matthew M. MD†; Yi, Jin-Seok MD†; Baldus, Christine R. RN†
Spine:01 March 2012 - Volume 37 - Issue 5 - p 393–401

これは友人のサムがアメリカで発表した論文で、初回手術と再手術の成績や合併症、頻度、満足度などを比較検討したものです。対象となった患者さんは 成人の特発性側弯症の患者さんの初回手術と再手術の方で、人数はそれぞれ125人程度です。平均年齢は55歳前後でした。
術前の痛みや障害は初回手術の方の方が強く、術後の痛みや障害の改善率には差がないという結果でした。(両方ともよく改善している。)一方で合併症は再手術に多く、感染や偽関節などが特に多いようでしたが、このような合併症を発症した患者さんでも最終的には合併症のない患者さんと同様によく改善したようです。
サムとも話しましたが、やはり再手術の方が執刀する方も難易度は高いです。理由は
単純に術野が癒着などにより展開しづらいこと。
10年以上前野古いインプラントが入っている場合があり、手術に制約があること。
骨移植などをするための部分がすでに前回手術で採取されていて、充分な骨移植ができない場合がある。
などケースバイケースですが、他にももろもろあります。
ですが、このように初回手術と差がなく改善するという結果には術者としては少し励まされます。
みなさんのご参考になったでしょうか?

側弯症の手術は危険なのか?

本日は特発性側弯症をはじめとするの手術がどの程度危険なものなのかということがテーマです。
我々の所属するアメリカ側弯症学会(SRS)という学会は側弯症の外科医にとって最も格式の高い学会で、世界で500人ほどがメンバーになっています。この学会にすばらしいところは、いろいろな研究チームが、所属する多くの病院から、1つのテーマごとに患者さんや病気の治療結果を集計して、本当の治療成績や、世界平均、合併症に発生頻度などを一般に明らかにしていることです。
その中でつい先日発表された、特発性側弯症の手術における合併症の発生頻度や実態を報告したレポートは非常に重要なものです。
Complications in the surgical treatment of 19,360 cases of pediatric scoliosis: a review of the Scoliosis Research Society Morbidity and Mortality database.
Spine (Phila Pa 1976). 2011 Aug 15;36(18):1484-91.
昨年夏に発行されたこの論文はSRSの合併症調査委員会によって調査されたもので、世界中のSRS会員の病院で行われた19360件の側弯症手術の合併症を調査報告したものです。
このなかで合併症は1971例、約10%に起きています。この合併症というのにはみなさんがご想像されるような恐ろしいものだけでなく、術中に少し血圧が下がった、術後に傷が痛かった、など、些細なものも含まれています。特発性側弯症の合併症発症率は6%くらいです。命につながるような合併症は0.02%程度のようです。神経の麻痺などの障害(多くは一過性)の発生率は背中を切ってスクリューをいれる手術では0.7%とのことでした。
いかがでしょうか?高いと感じるでしょうか?低いと感じるでしょうか?
私はこれまでの歴史や他の手術の安全性から考えるととても安全な手術に感じます。
ねがわくばこのブログをお読みになった患者さんやそのご家族がすこし安心して、手術に臨むことができればなあと思います。

アフリカでの側弯症手術のビデオ

毎年参加しているガーナでの重症側弯症手術トリップですが、この間youtubeに一部アップロードされていました。
残念ながら僕は参加していないときの模様でアメリカのABCで放送されたものです。
これをみるとアフリカで僕らのやっていることの雰囲気が伝わると思います。
日本で側弯症でお悩みの方も世界にはびっくりするくらい背骨が曲がっている方がいることをみると少し安心されるかもしれません。
以下サイトのアドレスです。
http://www.youtube.com/watch?v=Ci9XXSJyv50&feature=related
図FOCOS youtubeのコピー.jpg

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