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日米文化の違いに見る、側弯症、脊椎疾患治療基準の違い

今日は難しいタイトルにしてみました。
我々外科医は患者さんの治療の方針を決定する際、当然患者さんと話し合って決めていくわけですが、医師自身の治療プランというものを当然考えていきます。
特に手術の場合には、手術を行うか否かという判断に加えて、いつ、どのような方法で手術を行うのかということがとても大切になります。
これらの方針の決定の際、日米間の両国で働き、そこに違いがあること、それからその違いの原因はおそらく文化の違いにあるということに気付きました。
日本では治療方針を決定する際には、自身の経験や、患者個人個人の背景、特性等を考慮して治療方針を決定する場合が多いように感じます。一方で米国では、もちろんこれらのことは考慮に入れますが、どちらかというと、これまでのたくさんの手術成績や学会報告、論文といった科学的根拠に基づいて、ある程度画一的に治療を決定する傾向があるようです。
それぞれ、一長一短で、
日本の特徴は患者さんのそれぞれのは背景などを十分考慮して、オーダーメイド的な医療を行えるという利点がある一方で、画一的な治療を行っていないために、それぞれの治療方法の成績が不明であったり、将来に還元しづらかったり、毎回治療方針がぶれてしまったり、あるいは担当医の個人的な感覚に依存しすぎてしまうという弱点があります。
この決定方法はおそらく卓越した経験と知識を持つ医師には適した方法であると考えられる一方で、経験や知識のない医師がおこなえば、ただの思いつきの医療になってしまうという弱点があります。
一方アメリカ型の決定方針の特徴は、過去の学術的な根拠に基づいて治療を行うため、ある程度安定した治療成績が得られ、その意思決定方法を用いれば、ある程度知識や技量に差がある医師間でも一定した成績が期待できるということと、画一した治療により、その結果をわかりやすく未来の医療に還元できるという利点があります。
一方で本来患者さんは一人一人環境や状況が異なるため、本当にその患者に適した医療が行えているのかという疑問や、医師決定の根拠となっている論文等が本当に信頼できるのかという問題があります。
この医師決定方法の利点は研修医や、経験の浅い医師を科学的根拠を勉強させることで育成し、またある程度画一的な結果を担保できるため、平均的な技量と知識のある医師に向いていると考えられます。
それでは、この違いがどこからきているのか、ということを考えてみますと、
日本は単一民族国家ですから、言語や人種も単一です。相手のちょっとした表情の変化などで、相手の心の中を洞察することができます。以心伝心です。
一方、アメリカはまさに多民族国家ですから、このようなことは望むべくもありません。英語という言語も非常に原始的で、シンプルで、意志をわかりやすく伝えるのに適しています。
ですから、患者さん自身のちょっとした違いなどに基づいて治療を考えていくということは日本のような国に向いています。
また、日本が一般に”ものづくり”の国であって、アメリカが“マスプロ”の国であることなども、典型的な国民性の違いを反映していて、手術における意思決定の違いととても似ているなと思います。
もう一点日本とアメリカの違いは私個人としてはアメリカを見習わないといけないなと思っている部分です。
日本と比べてアメリカの医療の現場では、お互いで治療行為に対するカンファレンスあ度の話し合いや治療結果に対する話し合いが十分ななされ、またすべてが明るみに出ます。
この際、自身の治療や行為がどのような根拠にもとづいて行われたのかを他人に明確に説明する必要があります。日本の意思決定方針ではややもすると少しいい加減な、他人に説明できないような意思決定になってしまう場合があります。
ここはアメリカを見習って術前術後に医師やコメディカルのスタッフと治療の結果について遠慮なく話し合うことが重要ですし、そのことがより良い医師や看護師、リハビリのスタッフを育成する上で大変重要なことだと思います。
充分な技術と知識と経験があり、そのうえで過去の自分自身の経験と学術的根拠を頼りにし、患者さん個人個人に合わせて知立尾を行えるようになるのが私の目標です。

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