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側弯症の方の体のバランス

本日は学術的なお話です。
特発性側弯症は背骨の病気ですので、体の中心となる屋台骨が曲がることで、背骨だけでなく、腰のバランスや方のバランスなど様々な部分に影響が出ます。本日はその中でも特に整容上患者さんがとても気になさる、肩の高さの違いについて、書いてみたいと思います。
そもそも、どうして左右の肩の高さが側弯症になると違ってしまうのでしょう。側弯症の曲がり方は同じでも、ある患者さんは左肩が上がっており、またある患者さんは完全に左右がバランスされています。
これに関して最近僕自身が調査を行い、新しいことがわかったので、少し書いてみます。
先ほど書いた同じ側弯症のカーブの大きさやタイプでも患者さんそれぞれによって、
手術の前や後に肩の高さの左右差が違うことに注目して、側弯症の患者さんの肩のバランスには、側弯症のカーブの大きさ以外に、あるいは背骨以外の要素が関与しているのではないかと、仮説を立て検証しました。
私の仮説は、長い年月、曲がった背骨に体がバランスを合わせようとして、無意識に肩やウエストのバランスをとっているために、これらの部分に関節の硬さ等が生じて、術後背骨が完全にまっすぐになってもなお、肩関節などの硬さのために左右の肩の高さにアンバランスが出るのではないかというものです。
そこで独自に肩の関節と胸郭の位置関係の左右差をレントゲンから簡便に測定し、この左右差をいろいろな患者さんで比較してみますと、同じカーブでも胸郭に対する左右の肩の高さにはかなり違いがあるということがわかり、また術前に、左右の肩関節が胸郭に対してアンバランスになっていると、術後もこのアンバランスが残り、全体としてみたときにも、肩のアンバランスが出やすいということがわかりました。
つまり、側弯症の手術後肩のバランスは良い場合がほとんどですが、なかには脊椎をまっすぐにするだけではこの肩のアンバランスは改善しない場合あるということです。
この改善のためには肩の可動域訓練などが有効である可能性はありますが、データはありません。
もう少し調べてみると、側弯症のない健康な方の約25%に左右の肩のバランスが1センチ以上違う方がおられるようですので、術前の胸郭に対する左右の肩関節の高さの違いはひょっとすると側弯症とは無関係なのかもしれませんね。
詳しくは以下の論文をご参照ください。

Spine (Phila Pa 1976). 2013 Mar 1. [Epub ahead of print]
Clavicle Chest Cage Angle Difference (CCAD): A Novel Predictor of Postoperative Shoulder Imbalance in Patient With Adolescent Idiopathic Scoliosis.
Yagi M, Takemitsu M, Machida M.
Department of Orthopedic Surgery, National Center for Musculoskeletal Disorders Murayama Medical Center.
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ひかり母

昨年7月に側弯症の手術を娘(今は高1です)がしました。腰椎の側弯症でした。その時に先生のこのブログから大変勇気、励まされました。ありがとうございました。今度7月にまた検診があります。今年2月の検診の時も順調と言われました。 しかし先日肩甲骨の所の高さを見ると左右に差がありました。もしかすると術後にも差があったのかもしれないのですが。なんだか、神経質になっているのか、手術をしても進行する人もいるというのも頭にあったりして、もしかしたら、娘もその中の一人なのかな?とも思ったりしてしまいます。ただ今の時代のスマホの普及で、娘もスマホを気づくとよくやっています。そういう生活習慣からきているのかな?とも思ったりしています。勿論次の診察の時には担当の先生にはよく聞くつもりですし、レントゲン、諸々の検査があると思いますので、その時にこの不安が解消はされると思うのですが、不安がまた湧いてきてしまい、ついここに書いてしまいました。
お忙しいのにすみません。
by ひかり母 (2014-05-08 12:53) 

八木満

ひかり母さま
コメント拝見いたしました。
まずは手術が無事に終了して良かったですね。
肩の術後のバランスに関しましては今でも大きな課題となっています。
脊椎と肩関節はそもそも直接つながっておらず、胸郭を介してルーズに固定されています。ですので、さまざまな要因が肩のバランスに影響を与えます。
もちろん固定した脊椎の部位、していない部位のカーブやそれぞれのバランスも大切な因子です。
ときどき鏡を見て肩がまっすぐになるように意識することは一つ意味のあることであろうと思いますよ。
by 八木満 (2014-05-09 11:55) 

ひかり母

早速ありがとうございます。
人間の身体というのは、複雑にバランスを保っているのでしょうね。
よく鏡をみたりして、意識をするように声掛けをしていきたいと思います。
手術という形で沢山の方々にささえられて、今に至っているわけなので、そういう事すべてに感謝を親子で持ち続けて行きたいと思っています。
勿論八木先生にも感謝の気持ちでいっぱいです。
by ひかり母 (2014-05-09 12:35) 

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